さかもと歯科医院コラム記事

歯の神経を抜くときはどんな時?根管治療の流れと回数がかかる理由

根管治療 神経の処置

歯の治療の中で、「根管治療(こんかんちりょう)」、いわゆる「歯の神経を抜く治療」ほど、患者様にとって負担や疑問が多いものはありません。「痛みが引いたのになぜ通い続けなければならないのか?」「あと何回通えば終わるのか?」と不安に感じる方も多いのではないでしょうか。

結論から申し上げますと、 根管治療は「抜歯を避けてご自身の歯を残すための最後の砦」となる非常に重要な治療 です。回数がかかる理由は、目に見えないほど複雑で微細な歯の根の中を、徹底的に無菌状態にする必要があるからです。

四日市市のさかもと歯科医院が、なぜ根管治療には時間と回数が必要なのか、その医学的な理由と治療の流れについて、公的な情報に基づき分かりやすく解説します。

歯の神経を抜く必要がある症状と根管治療の目的

虫歯になったからといって、すぐに神経を抜くわけではありません。歯科医師は可能な限り「歯髄(しずい=歯の神経)」を残すよう努めます。しかし、細菌の感染が神経の奥深くまで進行してしまった場合、歯そのものを守るために神経を取り除く処置が必要になります。

ここでは、具体的にどのような症状の時に根管治療が必要になるのかを解説します。

ズキズキとした激しい痛みや温かいものがしみる時

虫歯が進行し、歯の内部にある神経(歯髄)にまで細菌が到達すると、激しい炎症が起こります。これを「歯髄炎(しずいえん)」と呼びます。

この段階では、以下のような特徴的な症状が現れます。

  • 何もしなくてもズキズキと痛む(自発痛
  • 温かい飲み物がしみる、痛みが誘発される
  • 夜、布団に入って体が温まると痛みが強くなる

冷たいものがしみる段階であれば、まだ神経を残せる可能性がありますが、温かいものがしみたり、持続的な強い痛みがある場合は、炎症が回復不可能なレベル(不可逆性歯髄炎)まで進んでいる可能性が高く、神経を取り除く処置が必要となります。

出典・参照元
厚生労働省 e-ヘルスネット「歯の神経の治療(根管治療)」

歯の根元に膿が溜まり歯茎が腫れている場合

一度神経の治療をした歯や、虫歯を放置して神経が死んでしまった歯の場合、痛みを感じなくなっても細菌感染は止まりません。細菌は歯の根の管(根管)を通って顎の骨の中にまで達し、根の先に膿の袋を作ることがあります。これを「根尖性歯周炎(こんせんせいししゅうえん)」と言います。

この状態での主な症状は以下の通りです。

  • 噛むと痛い、浮いたような感じがする
  • 歯茎におできのような膨らみ(フィステル)ができる
  • 歯茎を押すと膿が出る
  • 顔が腫れるほどの強い痛みが出ることもある

この場合、死んでしまった神経や、以前詰められた古い薬を取り除き、再度根の中を消毒する治療(感染根管治療)が必要になります。

汚染された神経を取り除き歯を残すための最終手段

根管治療(歯内療法)の最大の目的は、「歯を抜かずに残すこと」です。

歯の神経は、歯に栄養や水分を運ぶ大切な役割を持っています。神経を失った歯は、枯れ木のように脆くなり、変色したり割れやすくなったりします。そのため、安易に神経を抜くことは推奨されません。

しかし、細菌に侵された神経を放置すれば、最終的には歯を支える骨が溶かされ、抜歯せざるを得なくなります。

つまり、「神経を抜く」という処置は、感染の拡大を食い止め、ご自身の歯根を土台として使い続けるための「歯を救うための最終手段」なのです。

出典・参照元
特定非営利活動法人 日本歯科保存学会「一般の皆様へ:歯内療法(根管治療)について)」

なぜ何度も通う必要がある?根管治療の具体的な手順

「今の治療は、いつ終わるのだろう?」

根管治療を受けている患者様の多くが抱く疑問です。一般的な虫歯治療が数回で終わるのに対し、根管治療は数週間、場合によっては数ヶ月かかることもあります。

これには、歯の解剖学的な複雑さと、再発を防ぐための厳密な工程が関係しています。

複雑な形状をしている根の中を無菌状態にする難しさ

歯の根の中にある管(根管)は、まっすぐなパイプのような単純な形ではありません。人によって、また歯の場所によって以下のような複雑な形状をしています。

彎曲(わんきょく)
根が曲がっている状態。器具が先端まで届きにくい原因となります。
分岐(ぶんき)
木の枝のように、管が途中で枝分かれしている状態です。
網状(もうじょう)
網目のように細かく複雑に入り組んでいる状態です。

これらの微細な隙間に入り込んだ細菌を、肉眼で完全に確認することは不可能です。そのため、指先の感覚やレントゲン写真、歯科用拡大鏡などを駆使して、手探りで汚染物質を取り除かなければなりません。この非常に繊細な作業が、治療回数を必要とする大きな理由の一つです。

専用の器具を使った清掃と消毒を繰り返す重要性

根管治療は、以下の表のようなステップで進行します。特に「清掃・消毒」の工程は、一度で終わらせることが難しく、細菌がいなくなるまで何度も繰り返す必要があります。

【根管治療の基本的な流れ】

工程内容目的
1. 抜髄・除去ファイルやリーマーという専用の器具を使い、感染した神経や汚れを物理的に除去します。感染源を取り除く
2. 根管拡大細くて複雑な根の管を、消毒薬が届きやすいように少しずつ広げて形を整えます。薬液の浸透を良くする
3. 化学的洗浄殺菌効果のある薬液で根の中を何度も洗浄し、見えない細菌を死滅させます。無菌化(最重要)
4. 根管充填痛みや膿が治まったことを確認し、空洞になった根の中に防腐剤(ガッタパーチャなど)を隙間なく詰めます。細菌の再侵入を防ぐ

この工程の中で、もし細菌の取り残しがあれば、被せ物をした後に再び腫れてきてしまいます。そのため、焦らず確実に無菌状態を作ることが、将来的な歯の寿命を左右します。

最終的な薬を詰めて被せ物をするまでの工程

根の中がきれいになり、最終的な薬(根管充填材)を詰めた後も、治療は終わりではありません。

神経を失った歯は脆くなっているため、補強するための「土台(コア)」を立て、その上に「被せ物(クラウン)」を装着して初めて、以前のように噛む機能を取り戻すことができます。

  1. 根管治療完了
  2. 土台(コア)の構築
  3. 型取り
  4. 被せ物の装着

根の治療が終わってからも、これらの補綴(ほてつ)治療に数回の通院が必要となります。

出典・参照元
日本歯科医師会 テーマパーク8020「歯の神経を抜く(根管治療)」

治療を途中で中断してしまうリスクと抜歯の可能性

治療期間が長くなると、痛みも消えたため「もう行かなくても大丈夫だろう」「忙しいからまた今度でいいや」と考えてしまうことがあるかもしれません。

しかし、根管治療の中断は、歯にとって最も危険な行為です。

仮蓋の状態で放置すると細菌が再侵入し悪化する

治療中は、次回の診療までの間、歯に「仮の蓋(仮封:かふう)」をしています。この仮蓋は、あくまで数日〜数週間の使用を想定した柔らかい素材で作られています。

長期間放置すると以下のようなことが起こります。

  • 仮蓋がすり減ったり欠けたりして隙間ができる。
  • 隙間から唾液と共に細菌が根の中に侵入する。
  • せっかく消毒してきれいになった根の中が、再び細菌感染を起こす。

こうなると、治療はまた最初からやり直しになるだけでなく、前回よりも感染が広がり、治りにくくなってしまいます。

治療期間が長引いても最後まで通い続けることが大切

中断して放置した期間が長い場合、最悪のケースでは以下のような結末を迎えることになります。

抜歯(ばっし)
細菌感染が骨の深くまで達したり、歯そのものがボロボロになって残せなくなったりした場合、歯を抜かなければなりません。
全身への影響
歯の根の炎症から細菌が血液に入り込み、心臓疾患などの全身の病気に悪影響を及ぼす可能性も指摘されています。

根管治療は「根気」のいる治療です。しかし、そこを乗り越えれば、ご自身の歯で美味しく食事をし続ける未来が待っています。自己判断で中断せず、どうしても通院が難しい時期がある場合は、必ず歯科医師に相談してください。

出典・参照元
厚生労働省 e-ヘルスネット「歯周病と全身の状態」

根管治療の不安や疑問は四日市のさかもと歯科医院へ

歯の根の治療は、建物の「基礎工事」に似ています。どんなに立派な家(被せ物)を建てても、基礎(根の状態)が不安定では、すぐにダメになってしまいます。

だからこそ、私たちさかもと歯科医院は、見えない部分の治療にこそ時間をかけ、丁寧に向き合います

根気強い治療が必要だからこそ丁寧な説明とサポートを重視

当院では、患者様が「今、何をされているのか分からない」という不安を抱かないよう、現在の歯の状態や治療の進み具合を分かりやすくご説明することを心がけています。

「なぜあと数回必要なのか」「今日はどのような処置をしたのか」を明確にお伝えし、患者様と二人三脚で治療完了を目指します。疑問点があれば、どのような些細なことでもお気軽にご質問ください。

治療後のメンテナンスで再発を防ぐ予防プログラム

根管治療を終えた歯は、神経のある健康な歯に比べてどうしても再発のリスクや強度の低下が懸念されます。治療後の良好な状態を長く保つためには、ご自宅でのセルフケアに加え、歯科医院での定期的なメンテナンスが不可欠です。

  • 定期検診による被せ物のチェック
  • プロによるクリーニングで口腔内の細菌を減らす
  • 歯周病の予防管理

四日市市や三重県歯科医師会が推奨する検診制度なども活用しながら、治療した歯を一生涯使い続けられるよう、継続的にサポートいたします。

大切な歯を抜かずに残したいという想いに応える診療

「もう抜くしかない」と諦める前に、一度ご相談ください。

歯の神経の治療は、歯科医療の中でも特に繊細な技術と根気が求められる分野ですが、成功すればご自身の歯を使い続けることができます。

四日市市で根管治療、歯の痛みでお悩みの方は、さかもと歯科医院にお任せください。あなたの「残したい」という想いに、誠実な治療でお応えします

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