「奥歯が1本抜けただけだから、まだ噛めるし大丈夫」
「痛みもないし、歯医者に行くのが面倒でそのままにしている」
もし、このような理由で抜けた歯を放置してしまっているとしたら、それは少し危険なサインかもしれません。実は、たった1本の歯を失うことが、お口の中全体の崩壊を招き、さらには消化不良や認知症リスクといった全身の健康にまで悪影響を及ぼすことが分かっています。
この記事では、三重県四日市市の「さかもと歯科医院」が、歯が抜けたまま放置することのリスクと、ご自身に合った治療法の選び方について、分かりやすく解説します。
結論から申し上げますと、「歯は1本でも抜けたら、できるだけ早く適切な処置(補綴治療)を受けること」が、将来のご自身の健康を守るための最短ルートです。ブリッジ、入れ歯、インプラントなど、それぞれの治療法にはメリットとデメリットがあります。放置によるリスクを正しく理解し、ご自身のライフスタイルに合った選択をしていきましょう。
歯が抜けたまま放置することで起こるお口の中の連鎖的なトラブル
歯は、親知らずを含めると上下で32本あり、それぞれが互いに支え合いながらバランスを保っています。そのため、歯が抜けた部分(欠損部)を放置すると、ドミノ倒しのように周囲の歯に悪影響が及び、お口全体の環境が悪化してしまいます。
ここでは、時間の経過とともに起こる代表的な3つのトラブルについて解説します。
隣の歯が倒れ込み噛み合わせや歯並びが崩れるリスク
歯を失って一番最初に起こりやすいのが、「隣の歯の移動」です。
歯は、隣に歯があることで位置を保っていますが、その支えがなくなると、空いたスペースに向かって徐々に倒れ込んできます。
- 歯並びの変化
- 奥歯が抜けた場合、手前の歯が奥へ、あるいは奥の歯が手前へと傾斜します。これにより歯並びがガタガタになり、見た目が悪くなるだけでなく、新たな虫歯や歯周病の原因になります。
- 清掃性の低下
- 傾いた歯と歯茎の間には隙間ができやすく、食べカスが詰まりやすくなります。歯ブラシも届きにくくなるため、プラーク(歯垢)が蓄積し、健康だった隣の歯まで失うリスクが高まります。
噛み合う歯が伸びてくることによる顎関節への負担
次に起こるのが、「対合歯(噛み合う相手の歯)の挺出(ていしゅつ)」です。
例えば、下の歯が抜けた場合、噛み合う相手である上の歯は、噛むたびに受けていた「突き上げられる力」を失います。すると、人の体は不思議なもので、接触する相手を探して歯が徐々に伸びてきてしまうのです。
この現象には以下のようなリスクがあります。
- 噛み合わせの崩壊
- 伸びてきた歯が、本来の噛み合わせのライン(咬合平面)を乱し、顎をスムーズに動かせなくなります。
- 顎関節症のリスク
- 噛み合わせがズレることで、顎の関節や筋肉に無理な力がかかり、「口が開けにくい」「顎がカクカク鳴る」といった顎関節症の症状を引き起こすことがあります。
参考
歯を支える骨(歯槽骨)が吸収されて痩せてしまう問題
3つ目のトラブルは、目に見えない部分で進行する「骨の吸収」です。
歯を支えている骨(歯槽骨)は、噛むときの刺激が伝わることでその形や量を維持しています。しかし、歯を失うと刺激が伝わらなくなるため、体は「この部分の骨はもう不要だ」と判断し、骨が徐々に痩せて(吸収されて)いきます。
| 状態 | 骨への影響 |
|---|---|
| 歯がある時 | 噛む刺激により骨の新陳代謝が促され、骨量が維持される。 |
| 歯がない時 | 刺激がなくなり、廃用性萎縮(使わないことによる退化)が起き、骨が薄く低くなる。 |
骨が痩せてしまうと、顔の輪郭が変わってしまったり、将来的にインプラント治療や入れ歯治療を希望した際に、治療が難しくなったりする可能性があります。
参考
お口だけではない?消化不良や認知症など全身への深刻な影響
「たかが歯の1本」と思われるかもしれませんが、お口の機能低下は、全身の健康状態と密接に関係しています。近年、厚生労働省や日本歯科医師会も、歯の喪失と全身疾患の関連性について啓発を行っています。
食べ物をよく噛めなくなることによる胃腸への負担と消化不良
歯を失うと、当然ながら「噛む力(咀嚼能力)」が低下します。食べ物を十分に細かく噛み砕くことができず、大きな塊のまま飲み込むことになるため、胃腸などの消化器官に大きな負担がかかります。
- 唾液の減少
- よく噛むことは唾液の分泌を促します。唾液には消化酵素が含まれており、消化を助ける働きがありますが、噛む回数が減ると唾液も減り、消化不良を起こしやすくなります。
- 栄養の偏り
- 硬いものが食べにくくなるため、柔らかい炭水化物や加工食品中心の食事になりがちです。その結果、野菜や肉類などの繊維質やタンパク質が不足し、栄養バランスが崩れる原因となります。
噛む刺激が脳に伝わらなくなることによる認知症リスクの上昇
「噛むこと」は、脳への強力な刺激になります。噛むたびに歯の根っこにある「歯根膜」というセンサーが働き、脳への血流を増加させ、脳を活性化させることが分かっています。
- 関連性の研究
- 厚生労働省のe-ヘルスネットや8020推進財団の資料によると、歯が多く残っている人や、入れ歯などで噛み合わせが回復している人に比べ、歯を失ったまま放置している人は認知症の発症リスクが高いという研究結果が報告されています。
- 脳の活性化
- しっかり噛むことは、記憶や思考を司る脳の領域(海馬など)を刺激し、認知機能の維持に役立ちます。
参考
口元のシワが増えて実年齢よりも老けて見えてしまう可能性
歯は、口元の皮膚や筋肉を内側から支える「柱」の役割も果たしています。特に前歯や奥歯を失うと、頬や唇の張りが失われ、皮膚がたるみやすくなります。
- ほうれい線が深くなる:頬の筋肉の支えがなくなり、たるみが生じます。
- 口元がすぼまる:歯による内側からのボリュームがなくなり、口元が老け込んだ印象になります。
- 表情筋の衰え:噛む回数が減ることで、口周りの筋肉(表情筋)が衰え、表情が乏しくなることがあります。
いつまでも若々しい表情でいるためにも、歯並びと噛み合わせを維持することは非常に重要です。
失った歯を補うための3つの治療法の選択肢と特徴
抜けた歯を放置することのリスクをご理解いただいたところで、具体的な治療法について解説します。
一般的に、失った歯を補う方法には「ブリッジ」「入れ歯(義歯)」「インプラント」の3つの選択肢があります。それぞれの特徴を比較し、ご自身に最適な方法を検討する材料にしてください。
両隣の歯を削って橋をかけるブリッジのメリットとデメリット
ブリッジは、失った歯の両隣にある健康な歯を削り、それらを土台(橋脚)にして、橋をかけるように人工の歯を被せる治療法です。
メリット
- 固定式のため、違和感が少なく、自分の歯に近い感覚で噛むことができます。
- 保険適用内であれば、比較的安価に治療が可能です。
- 治療期間が比較的短く済みます。
デメリット
- 健康な歯を削る必要がある:土台となる両隣の歯を大きく削らなければなりません。
- 支えとなる歯への負担:欠損部分にかかる噛む力を両隣の歯で支えるため、土台となる歯の寿命を縮めるリスクがあります。
参考
取り外し可能で保険適用も選べる入れ歯(義歯)
入れ歯(義歯)は、取り外し可能な装置を使って歯を補う方法です。1本だけ失った場合の「部分入れ歯」と、すべての歯を失った場合の「総入れ歯」があります。
メリット
- 健康な歯をほとんど削らずに治療ができます。
- 保険適用が可能なため、費用を抑えることができます。
- 取り外して洗えるため、手入れがしやすい場合があります。
デメリット
- 噛む力が弱い:天然の歯に比べて、噛む力は30%〜40%程度になると言われています。
- 異物感がある:装置がお口の中に入るため、慣れるまでは話しにくさや食べにくさを感じることがあります。
- バネが見える:保険の部分入れ歯の場合、金属のバネ(クラスプ)が目立ち、見た目が気になることがあります。
自分の歯のように噛めるインプラントという選択
インプラントは、歯を失った部分の顎の骨にチタン製の人工歯根(インプラント体)を埋め込み、その上に人工の歯を装着する治療法です。
メリット
- 自分の歯のように噛める:骨にしっかりと固定されるため、天然歯とほぼ変わらない噛み心地が得られます。
- 周りの歯を守れる:ブリッジのように隣の歯を削ったり、入れ歯のようにバネをかけたりする必要がないため、残っている健康な歯への負担がありません。
- 見た目が自然:セラミックなどの素材を使用するため、天然歯に近い美しい見た目を再現できます。
デメリット
- 自費診療である:保険が適用されないため、費用が高額になります。
- 手術が必要:インプラントを埋め込むための外科手術が必要です。
- 治療期間が長い:骨とインプラントが結合するのを待つため、治療完了までに数ヶ月かかります。
- メンテナンスが必須:インプラント周囲炎(歯周病のような病気)を防ぐため、定期的なメンテナンスが不可欠です。
参考
日本歯周病学会「歯周病Q&A(インプラント周囲炎について)」
治療法の比較まとめ
| 項目 | ブリッジ | 入れ歯 | インプラント |
|---|---|---|---|
| 噛む力 | 普通 | 弱い | 強い(天然歯に近い) |
| 隣の歯への負担 | 大きい(削る必要あり) | 中程度(バネをかける) | なし |
| 外科手術 | なし | なし | あり |
| 保険適用 | ◯ | ◯ | ×(自費) |
| 見た目 | 普通(金属が見える場合も) | バネが見えることがある | 自然で美しい |
歯を失ってお困りの方は四日市のさかもと歯科医院へご相談ください
歯を失ったときの選択肢は一つではありません。また、お口の状態や患者様のライフスタイルによって、最適な治療法は異なります。
私たち「さかもと歯科医院」は、四日市市の地域密着型歯科医院として、患者様一人ひとりに寄り添った治療を提供しています。
1本だけ抜けた場合でも放置せずに早めの受診を推奨
「1本くらいなら大丈夫」という油断が、将来的に多くの歯を失う原因になります。
当院では、抜けた歯の本数にかかわらず、早期発見・早期治療を推奨しています。早めにご相談いただくことで、治療の選択肢が広がり、期間や費用も抑えられる可能性が高まります。
痛みがない状態でも、まずは検診にお越しください。
患者様のライフスタイルやご予算に合わせた治療計画の提案
当院では、医学的に最善の治療を押し付けることはいたしません。
「費用を抑えたい」「できるだけ長持ちさせたい」「見た目をきれいにしたい」「手術は怖い」など、患者様のご希望は様々です。
- 保険診療で可能な限りの機能回復を目指すプラン
- 自費診療(インプラントや精密な入れ歯)で、より快適で美しい口元を目指すプラン
など、複数の選択肢をご提示し、それぞれのメリット・デメリットを分かりやすく説明いたします。医療費控除の対象となる場合もありますので、費用面についても安心してご相談ください。
参考
トリートメントコーディネーターによる丁寧なカウンセリング
歯科医師には聞きにくいことや、治療に対する不安をお持ちの方もいらっしゃるかと思います。
さかもと歯科医院には、専門の「トリートメントコーディネーター」が在籍しています。
治療に入る前に、専用のカウンセリングルームで患者様のお話をじっくりと伺います。
「どのようなお口の状態になりたいか」というゴールを共有し、納得して治療を受けていただけるよう、誠心誠意サポートさせていただきます。
抜けた歯を放置せず、まずは一度、さかもと歯科医院までお気軽にご相談ください。
私たちと一緒に、いつまでも美味しく食事ができる健康なお口を守っていきましょう。

