さかもと歯科医院コラム記事

朝起きると顎が痛い…無意識の「歯ぎしり・食いしばり」から歯を守る方法

かむこと くいしばり 悪習癖

朝目覚めたとき、顎(あご)に重だるい疲れを感じたり、なんとなく歯が痛んだりすることはありませんか? もしかすると、それは寝ている間に無意識に行っている「歯ぎしり」や「食いしばり」が原因かもしれません。これらは単なる癖ではなく、放置すると歯が割れたり、顎関節症を引き起こしたりするリスクがあります。

結論から申し上げますと、こうした無意識の力から歯を守る最も有効な対策は、歯科医院で作成する「ナイトガード(マウスピース)」の使用と、日中の「TCH(歯列接触癖)」の改善です。

この記事では、四日市市のさかもと歯科医院が、ご自身でできるセルフチェック方法から、保険適用で作れるマウスピースの効果と費用、そして生活習慣での対策まで、わかりやすく解説します。

無意識に行っている歯ぎしりや食いしばり(TCH)のセルフチェック

「自分は歯ぎしりなんてしていない」と思っていても、実は成人の多くが睡眠中や日中に無意識に歯を食いしばっていると言われています。まずは、ご自身の今の状態を確認してみましょう。

医学的には「ブラキシズム(口腔内悪習癖)」と呼ばれ、ギリギリと音を立てるだけでなく、音のしない食いしばりも含まれます。以下の症状に当てはまるものがないか、チェックしてみてください。

朝起きた時に顎が疲れていたり奥歯が痛んだりする

朝起きた瞬間、顎の関節あたりにこわばりや疲労感を感じることはありませんか? あるいは、虫歯ではないはずなのに、奥歯がジーンと痛むような感覚がある場合、睡眠中に非常に強い力で噛みしめている可能性が高いです。

睡眠中の噛む力は、起きている時の食事などの力に比べて数倍から時には100kg近くに達することもあると言われています。この過剰な力が、朝の不快感の正体であることが多いのです。

出典・参照元
e-ヘルスネット(厚生労働省):「歯ぎしり」

舌の縁に歯型がついていたり頬の内側に白い線がある

鏡を使って、ご自身のお口の中を観察してみてください。

舌の側面
ギザギザとした波打つような歯型がついていませんか?
頬の内側の粘膜
上下の歯が合わさるラインに沿って、白い線のような跡(圧痕)がついていませんか?

これらは、舌や頬を歯に強く押し付けている、あるいは常に吸い込むような力をかけている証拠であり、無意識の食いしばりが習慣化している典型的なサインです。

日中の集中している時に無意識に上下の歯を接触させている

本来、人間の上下の歯が接触するのは、食事や会話の時だけです。リラックスしている時、上下の歯の間には1〜3mm程度の隙間(安静空隙)があるのが正常です。

しかし、パソコン作業や家事、車の運転など、何かに集中している時に、上下の歯が触れ合っていたり、軽く噛みしめていたりすることはありませんか? これをTCH(Tooth Contacting Habit:歯列接触癖)と呼びます。弱い力であっても、長時間接触し続けることで筋肉が緊張し、歯や顎への負担となります。


歯ぎしりが引き起こすお口のトラブルと全身への悪影響

「たかが歯ぎしり」と放置してしまうと、お口の中だけでなく全身の健康にも悪影響を及ぼす可能性があります。歯にかかる負担は想像以上に大きく、様々なトラブルの引き金となります。

歯が削れたりヒビが入ったりして割れてしまうリスク

長期間にわたって強い力が加わり続けると、歯の表面(エナメル質)がすり減り、平らになってしまいます。さらに進行すると、以下のような深刻な状態を招くことがあります。

  • 知覚過敏:歯がすり減って神経に近づくことで、冷たいものがしみやすくなります。
  • 歯の破折(はせつ):強い圧力に耐えきれず、歯にヒビが入ったり、縦に割れてしまったりすることがあります。特に神経を抜いた歯は脆くなっているため、歯ぎしりの力で割れてしまい、最悪の場合は抜歯が必要になることもあります。

顎関節症の原因となり口が開かなくなったり音が鳴る

顎の関節(顎関節)にも大きな負担がかかります。口を開けようとすると「カクカク」「ジャリジャリ」と音が鳴ったり、口が大きく開かなくなったり、痛みが生じたりする場合、「顎関節症」の可能性があります。

日本口腔外科学会によると、顎関節症の原因は一つではなく、歯ぎしりや食いしばり、ストレス、噛み合わせの悪さなどが積み重なって発症すると考えられています。

出典・参照元
日本口腔外科学会:「口腔外科相談室・顎関節症」

慢性的な肩こりや頭痛の原因になることもある

口周りの筋肉(咬筋や側頭筋)は、首や肩の筋肉ともつながっています。 食いしばりによって口周りの筋肉が常に緊張状態にあると、その緊張が首や肩へと伝播し、慢性的な肩こりや首の痛み、さらには筋緊張性の頭痛を引き起こす原因となることがあります。 「マッサージに行っても肩こりが治らない」という方が、実は歯ぎしりが原因だったというケースも珍しくありません。


歯科医院で作るマウスピース(ナイトガード)による対策と治療

無意識に行う歯ぎしりを完全に止めることは難しいですが、歯や顎にかかる負担を軽減し、守ることは可能です。そのための最も一般的で効果的な治療法が、歯科医院で作成する「ナイトガード(マウスピース)」です。

寝ている間の強い力から歯と顎を守るマウスピースの効果

ナイトガードを就寝中に装着することで、以下のような効果が期待できます。

  • 歯の摩耗・破折の防止:上下の歯が直接触れ合わないようにクッションの役割を果たし、歯が削れたり割れたりするのを防ぎます。
  • 顎関節への負担軽減:顎の関節にかかる力を分散させ、顎関節症の症状を和らげたり予防したりします。
  • 筋肉の緊張緩和:噛み合わせの高さを微妙に調整することで、筋肉の緊張を和らげる効果も期待できます。

保険適用で作成できるナイトガードの費用と手順

「マウスピースを作ると高いのでは?」と心配される方もいらっしゃいますが、歯ぎしりや顎関節症の治療を目的としたナイトガードは、 健康保険が適用されます

一般的な作成費用と手順は以下の通りです。

費用の目安(3割負担の方の場合)

費用の目安約3,000円〜5,000円程度
補足※診察料や検査料を含んだ概算です。医院や形状によって多少異なりますが、自費診療(スポーツ用など)に比べて安価に作成できます。

作成の手順

  1. 診察・検査:お口の中の状態を確認し、歯ぎしりや顎関節症の診断を行います。
  2. 型取り:上下の歯の型を取ります。
  3. 作成:歯型模型に合わせて、患者様専用のマウスピースを作成します(通常1週間〜2週間程度)。
  4. 調整・お渡し:完成したマウスピースを装着していただき、噛み合わせを微調整してお渡しします。
出典・参照元
テーマパーク8020(日本歯科医師会):「歯ぎしり」

ストレス発散や枕の高さ調整など生活習慣での工夫

マウスピースによる物理的な保護に加え、生活習慣の見直しも大切です。

ストレス管理
歯ぎしりの大きな原因の一つはストレスです。入浴や軽い運動など、リラックスできる時間を作りましょう。
枕の高さ
枕が高すぎると顎を引いた状態になり、噛みしめやすくなることがあります。首のカーブに合った適切な高さの枕を選ぶことが推奨されます。
TCHの是正
日中、歯を接触させていることに気づいたら、「歯を離す」と意識して脱力する習慣をつけましょう。目につく場所に「歯を離す」と書いたメモを貼るのも有効です。

顎の痛みや歯のすり減りが気になる方は四日市のさかもと歯科医院へ

歯ぎしりや食いしばりは、ご自身では自覚しにくいものですが、お口の中に確実にサインが現れています。「もしかして?」と思ったら、早めに専門家によるチェックを受けることが、将来ご自身の歯を残すことにつながります。

四日市市のさかもと歯科医院では、患者様一人ひとりのお口の状態に合わせた丁寧な診断と治療を行っています。

患者様のお口にぴったり合ったマウスピースの作成

市販のマウスピースもありますが、適合が悪かったり噛み合わせが不適切だったりすると、かえって顎の痛みを悪化させる恐れがあります。 当院では、患者様の歯型を精密に採取し、歯科医師と歯科技工士が連携して、お口にぴったりとフィットする違和感の少ないマウスピース(ナイトガード)を作成いたします。 初めての方でも安心して使っていただけるよう、装着方法やお手入れについても丁寧に指導いたします。

噛み合わせの調整やTCH(歯列接触癖)是正の指導

マウスピースの作成だけでなく、全体的な噛み合わせのチェックも行います。一部の歯だけが強く当たっている場合などは、わずかに調整を行うことで顎への負担が軽減されることがあります。 また、日中の食いしばり(TCH)を改善するための具体的なアドバイスやトレーニング方法についてもご案内し、生活習慣の改善をサポートします。

大切な歯を破折から守るための予防的なアプローチ

さかもと歯科医院では、虫歯や歯周病の治療だけでなく、「歯を守るための予防」に力を入れています。 歯ぎしりによる「歯の破折」は、抜歯原因の上位を占めるトラブルの一つです。痛みが出てからではなく、痛みが出る前の「予防的なナイトガード」の使用も推奨しています。

「朝起きると顎がだるい」「歯がすり減っている気がする」など、少しでも気になる症状があれば、お気軽に四日市のさかもと歯科医院までご相談ください。大切な歯を一緒に守っていきましょう。

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