歯周病は、単にお口の中だけで完結する病気ではありません。近年の研究により、歯周病菌やその炎症物質が血液を介して全身を巡り、糖尿病、心疾患、誤嚥性肺炎、そして妊婦さんの早産など、命に関わる重大な病気と深く関係していることが明らかになっています。
四日市市のさかもと歯科医院では、お口の健康を守ることが全身の健康寿命を延ばす鍵であると考えています。本記事では、歯周病が全身に及ぼすリスクと、その予防法について医学的な根拠に基づいて分かりやすく解説します。
歯周病はお口の中だけの問題ではない全身との密接な関係
歯周病(歯槽膿漏)というと、「歯ぐきが腫れる」「歯が抜ける」といったお口の中だけのトラブルだと思われていませんか? 実は、歯周病は 全身の健康を脅かす感染症 であることが、近年の医学研究で次々と明らかになっています。
お口の中には数百種類の細菌が住んでいますが、歯磨きが不十分だと、これらの細菌がネバネバした物質(プラーク/歯垢)を作り出し、歯にくっつきます。プラーク1mgの中には、なんと約10億個もの細菌が存在すると言われています。この細菌の塊が炎症を引き起こし、やがてその影響は全身へと広がっていくのです。
歯周病菌が血管に入り込み全身を巡るリスク
なぜ、お口の病気が全身に影響するのでしょうか。その主なルートは「血液」です。 歯周病が進行すると、歯ぐきの内側が炎症を起こして潰瘍(傷口)のようになります。そこから歯周病菌や、炎症によって作られた毒性物質(サイトカインなど)が血管内に侵入し、血流に乗って全身の臓器へと運ばれてしまいます。
これを 菌血症 や炎症性物質の全身波及と呼びます。血管に入った細菌や毒素は、体のあちこちで微細な炎症を引き起こし、様々な病気のリスクを高めたり、持病を悪化させたりする原因となるのです。
糖尿病と歯周病の相互関係と治療による改善効果
歯周病と全身疾患の中で、特に密接な関係にあるのが「糖尿病」です。この二つは、互いに悪影響を及ぼし合う 双方向の関係 にあることが分かっています。
- 糖尿病が歯周病を悪化させる
- 高血糖状態が続くと、体の免疫機能が低下し、感染症にかかりやすくなります。また、組織の修復力も落ちるため、歯周病が重症化しやすくなります。
- 歯周病が糖尿病を悪化させる
- 歯周病菌が出す毒素や炎症性物質(TNF-αなど)が血液に入ると、血糖値を下げるホルモンである「インスリン」の働きを妨げてしまいます(インスリン抵抗性)。これにより、血糖コントロールが悪化します。
しかし、これは逆説的に「希望」でもあります。 歯周病を治療し、お口の状態を改善することで、糖尿病の数値(HbA1cなど)が改善する という報告も多数なされています。 糖尿病の治療を受けている方は、内科だけでなく歯科でのケアも併せて行うことが非常に重要です。
動脈硬化や心筋梗塞などの心疾患リスクを高める可能性
日本人の死因の上位を占める心疾患(狭心症・心筋梗塞)や脳血管疾患(脳梗塞)。これらは主に「動脈硬化」が原因で起こりますが、ここにも歯周病菌が関与している可能性が指摘されています。
動脈硬化を起こした血管のプラーク(コブ状の塊)を調べると、そこから歯周病菌が検出されることがあります。歯周病菌などの刺激により血管内で炎症が起こり、動脈硬化を促進させる物質が出て、血管を詰まらせやすくしてしまうのです。
また、心臓の内膜に細菌が感染して起こる「感染性心内膜炎」の原因の一つとしても、お口の中の細菌が挙げられています。心臓に持病がある方にとって、お口を清潔に保つことは命を守ることにもつながります。
高齢者の命に関わる誤嚥性肺炎と妊婦さんへの影響
歯周病の影響は、年齢やライフステージによって異なる形で現れます。特に注意が必要なのが、ご高齢の方と妊娠中の女性です。
お口の細菌が肺に入ることで起こる誤嚥性肺炎の予防
高齢化が進む日本において、肺炎は死亡原因の上位となっています。その多くを占めるのが 誤嚥性(ごえんせい)肺炎 です。
誤嚥性肺炎のメカニズム
- 嚥下機能の低下
- 加齢や脳血管障害の後遺症などで飲み込む力(嚥下機能)が低下すると、食べ物や唾液が誤って気管や肺に入ってしまうことがあります(誤嚥)。
- 細菌の侵入
- この時、お口の中が汚れていて歯周病菌などの細菌が大量に含まれていると、その細菌が肺に入り込んで炎症(肺炎)を引き起こします。
お口の中を清潔にし、細菌数を減らす口腔ケアを行うことで、誤嚥性肺炎の発症リスクを下げられることが分かっています。ご自身での歯磨きが難しい高齢者の方には、ご家族や歯科専門職によるサポートが欠かせません。
妊娠中の歯周病が引き起こす早産や低体重児出産のリスク
妊婦さんはホルモンバランスの変化により、歯ぐきが腫れやすくなる「妊娠性歯肉炎」にかかりやすい状態です。 妊娠中に重度の歯周病にかかっていると、歯周病による炎症性物質が血流に乗って子宮に達し、子宮の収縮を促してしまいます。
その結果、正期産よりも早く生まれてしまう**「早産」 や、赤ちゃんの体重が増えきらない 「低体重児出産」**のリスクが高まることが報告されています。そのリスクは、タバコやアルコール、高齢出産などよりもはるかに高いというデータもあります。 「マイナス1歳からの虫歯予防」と言われるように、生まれてくる赤ちゃんのために、妊娠中から歯科検診を受けることが推奨されています。
家族みんなで取り組む口腔ケアの重要性
歯周病菌や虫歯菌は、唾液を介して人から人へと感染するリスクがあります。特に、スプーンや箸の共有、キスなどを通じて、大人から子供へ、あるいはパートナー間での感染が起こり得ます。 家族の一人が一生懸命ケアをしていても、他のご家族にお口のトラブルがあれば、家庭内で菌が行き来してしまうかもしれません。
- 家族単位での受診
- ご家族全員で定期検診を受け、お口の中の細菌をコントロールすることが、結果として家族全員の健康を守ることにつながります。
- 生活習慣の共有
- 食生活や喫煙習慣など、歯周病のリスクとなる生活習慣は家族で似通う傾向があります。みんなで健康的な生活を意識しましょう。
全身の健康寿命を延ばすための医科歯科連携と予防歯科
「痛くなったら歯医者に行く」という考え方は、過去のものとなりつつあります。現在は「全身の健康を守るために歯医者に行く」という予防歯科の考え方がスタンダードです。
8020運動が目指す健康で豊かな生活の実現
厚生労働省と日本歯科医師会が推進している「8020(ハチマルニイマル)運動」をご存知でしょうか。「80歳になっても20本以上自分の歯を保とう」という運動です。
20本以上の歯があれば、ほとんどの食べ物を噛み砕き、美味しく食べることができます。しっかりと噛んで食事を摂ることは、栄養摂取の面で有利なだけでなく、脳への血流を増やし認知症予防にもつながると期待されています。 歯を残すことは、単に「食べられる」だけでなく、自立した生活を長く続ける 健康寿命の延伸 に直結するのです。
定期検診で歯周病をコントロールすることの意義
歯周病は「沈黙の病気(サイレント・ディジーズ)」とも呼ばれ、初期段階では痛みなどの自覚症状がほとんどありません。歯がグラグラしたり、痛みが出たりした頃には、すでに重症化していることが多いのです。
また、歯周病の原因となる歯垢(プラーク)や歯石は、毎日の歯磨きだけでは完全に取り除くことができません。特に歯周ポケットの奥深くに入り込んだ汚れは、歯科医院での専門的なクリーニングでしか除去できません。
- プロフェッショナルケア
- 歯科衛生士による専用器具を使ったクリーニング。
- セルフケア
- ご自宅での正しい歯磨き、フロスや歯間ブラシの使用。
この2つを両立させることで初めて、歯周病を効果的に予防・管理することができます。
四日市のかかりつけ歯科医として全身の健康をサポート
四日市市では、市民の皆様の健康を守るため、様々な歯科検診制度が設けられています。
- 妊婦歯科健康診査: 妊娠中の方を対象とした検診。
- 歯周疾患検診: 40歳、50歳、60歳、70歳などの節目の年齢の方を対象とした検診。
- 後期高齢者歯科健康診査: 75歳以上の方を対象とした検診。
さかもと歯科医院は、これらの検診の実施医療機関です。「最近、歯医者に行っていないな」という方は、市の制度をきっかけに受診されてみてはいかがでしょうか。地域の皆様の「かかりつけ歯科医」として、お口から全身の健康をサポートいたします。
全身の健康を守るために四日市のさかもと歯科医院をご利用ください
当院では、患者様一人ひとりの全身状態を考慮した上で、安全で丁寧な治療を提供することを心がけています。
持病をお持ちの方にも配慮した安全な歯科治療の提供
糖尿病、高血圧、心疾患などの持病をお持ちの方や、血液をサラサラにするお薬を服用されている方は、歯科治療に不安を感じることもあるかと思います。 さかもと歯科医院では、患者様の全身の健康状態を十分に把握した上で、かかりつけの医科の先生とも連携(医科歯科連携)を取りながら治療を進めてまいります。また、院内感染予防対策も徹底しており、安心して通院いただける環境を整えています。
お薬手帳を確認しながら行う丁寧なカウンセリング
初診時や治療前には、必ず丁寧なカウンセリングを行います。その際、現在服用されているお薬の内容を確認させていただくため、 お薬手帳のご提示 をお願いしております。 お薬の飲み合わせや、治療への影響を専門的な視点でチェックし、お体に負担の少ない治療計画をご提案いたします。
トリートメントコーディネーターへの健康相談も歓迎
「先生には直接聞きにくい」「治療費や期間が心配」といったお悩みも、当院に在籍する トリートメントコーディネーター にお気軽にご相談ください。 患者様のお話にしっかりと耳を傾け、納得して治療を受けていただけるよう、橋渡し役としてサポートいたします。
お口のことで気になることがあれば、どんな小さなことでも構いません。四日市市のさかもと歯科医院へ、どうぞお気軽にご来院ください。

